ロスカットとは、特定の損失に到達した際にFX業者が取引を自動的に終了させる制度です。この言葉から否定的な印象を受けるかもしれませんが、実際にはトレーダーを大規模な損失から守るための安全装置として機能します。
取引を行う際の基本的な知識として、ロスカットについて正しく理解しておくことが重要です。この記事では、ロスカットの動作原理、気を付けるべき点、そしてそのリスクを回避するための方法について詳細に説明します。
ロスカットの概念とは?
FX取引におけるロスカットは、損失が拡大するのを防ぐための仕組みです。
もしロスカットが存在しなければ、預入れた証拠金を完全に失うリスクがあるだけでなく、さらに資金を追加で支払う場面も想定されます。
ロスカットのおかげで、一度取引が決済されれば損失は固定されるものの、最低でも一部の資金は確保されることが多いです。しかしながら、市場が非常に急激に動く時には、預けた証拠金以上の損失が生じることも考えられます。
ロスカットの算出方法
ロスカットの算出は以下の式に従います。
ロスカット=必要証拠金×100%
例を挙げると、次のような状況での算出となります。
取引量:1,000通貨
必要証拠金:4,000円(1ドルを100円と仮定した場合)
ロスカット率:100%
この場合の計算は、
4,000円×100%=4,000円
となります。これは、証拠金が4,000円を割るとロスカットが適用されることを意味します。この手法で、ロスカットが行われる損失の範囲を特定することができます。
ロスカットのポイントと留意事項
ロスカットを活用する時、押さえておくべき要点を以下に挙げます。
ロスカットのタイミングは保障されない
ロスカットは基本的に預けた証拠金を超える損失を防ぐためのメカニズムですが、常に効果的とは限りません。特に、急激な市場の動きや大きな価格の変動が生じた際には、ロスカットが追いつかず、預けた証拠金を超える損失が発生するリスクがあります。したがって、ロスカットが存在するからと言って、高いレバレッジや高リスクの取引に無警戒になるのは控えるべきです。
ロスカットを回避したい場面でのアクション
ロスカットは、資金を保護するためのシステムですが、それによって望ましくない取引を強いられることもあり得ます。特定の戦略や長期投資の一環として、ロスカットを意図的に避ける方法を以下に示します。
1.追加の証拠金を供給する:
証拠金の追加により、証拠金維持率(=評価額÷必要証拠金)が向上し、ロスカットのリスクが低下します。ただし、市場が不利な方向に動き続けると、証拠金維持率が再び低下し、ロスカットの危険が高まる可能性があります。無闇に資金を追加するのではなく、明確な戦略を持って行動することが求められます。初心者は、追加の証拠金を供給するよりも、低いレバレッジを使用してリスクを制御する方が賢明です。
2.現有のポジションを部分的に解消する:
複数のポジションを所有している際、一部のポジションを決済することで、一時的に証拠金維持率を向上させることが可能です。しかし、市場が逆行すると、証拠金維持率は下がり、結果的にロスカットのリスクが増加します。
従って、長期的な保有を考えるのでなく、決められた損失限界に達した場合は迅速にポジションを解消することを検討するべきです。不利益なポジションを保持し続けると、新しい投資機会に対応できないリスクがあります。機会損失を回避するためにも、タイムリーにポジションを整理し、次の投資機会を待つ姿勢が重要です。
ロスカットに関するQ&A
ロスカットについての一般的な疑問とその回答を以下にまとめました。
1.ロスカットと損切りの主な違いは何ですか?
ロスカットはFX業者が顧客の資産を保護する目的で自動的に実施される取引の終了処理です。対照的に、損切りはトレーダー自身の判断で行う取引の終了処理です。どちらも取引を終了するという意味では似ていますが、実際には異なる概念です。
2.窓を開けてスタートした際にロスカットされる場合、どうなるのでしょうか?
例えば、週明けの月曜日やシステムメンテナンス後に、窓が開いた状態で取引が開始されることがあります(※1)。この際にロスカットが実施された場合、保証金を超える損失が発生し、追加資金の支払いが必要となることが考えられます。
※1:窓とは、相場のチャート上で価格が大きく飛ぶことによって生じる空白のことを指します。